2019年7月、滋賀県米原市で86歳男性が60年近く寄り添った認知症の妻を殺害した事件。
公判において日ごろの家族関係が垣間みれたこと。別居している息子2人や福祉関係者が認知症の妻の施設入所を勧めていたが、被告である夫は施設入所を拒否し続けたとのこと。新聞報道等を見ると、2011年頃から認知症と診断し、2017年頃から介護保険のサービスを定期的に利用。夫は毎日朝食のみ夫婦の食事を準備していたとのこと。
認知症とはわかりながらも、何度も食事を探す妻に対して怒鳴るなどの言動が増えたとか。昔から家族などの意見には耳をかたむけず、自分がみることを選択していた。公判において、妻を入所させない理由として①自分ひとりの生活になる不安、②経済的な不安、③妻を入所させることでの周りの目を気にしていたこと、等を挙げていた模様。介護負担が大きくなる中で、妻への言動に不満を持ち、最終的には、幾度も妻の首に包丁を刺す犯罪になった。
私も介護に熱心に行う男性介護者を多くみて支援を行ったことがある。介護を行うきっかけや思いはいろいろではあるが、私がかかわった方々の多くは「私が仕事をしているときに妻に負担をかけた。その恩返しだ。」との発言が印象に残っている。男性は女性に比べ、生活を送る地域において交われる人がいないことが多く、地域や友人、また親族にも自分の介護負担感を知られることを恐れている感じもある。
介護者自身が、自分で介護の渦に巻き込まれ、客観的に物事を見れる余裕をなくしていることが多くある。男性介護者は「助けて」ということが苦手なのかもしれない。だとすれば、周りが男性介護者に寄り添い、生き様を肯定的に受け止めていくとともに必要な支援の方法を一緒に考えていく姿勢と提案が必要なのかもしれない。
誰もが起こりうる問題。私たちの周りにも「大丈夫」と言いながら介護に取り組む方々がいるのかも。この現実に向き合い、私たちのかかわり方も常に感度を高め取り組んでいく必要があると考えさせられた判決でした。改めてお悔やみを申し上げるとともに、被告者である夫には罪は受け止めるとともに、一方で自分の人生そのものは否定せずに過ごしていただきたいと思いました。(今)


